映画「ヴェノム」評価・個人的ストーリー解釈、感想・コメント

評価

【個人的評価(0〜5):3.6】

 今作でヴェノムと一心同体になる記者のエディ・ブロックを演じている トム・ハーディ さんの演技が素晴らしく、序盤の野望や私利私欲を優先するような性格から中盤にかけての闇を抱えていく姿が非常によく感じ取れます。

 今作の鍵を握るシンビオートと呼ばれる 最悪な 生命体を常時最強の生命体として扱うことによって人間との格差や戦闘においての格の違いが色濃く現れていました。

 ヴェノムになった後のエディの恐怖や気持ちも揺れ動きも僕達人間にも分かりやすい道を辿っていました。
 ヴェノムはCMでも言っている通り人間を喰らっていくという非常にグロテスクな設定でありましたが、今作「ヴェノム」ではグロテスクなシーンや一部の方が不快に思うような過激なシーンは少なかったです。

 残念なポイントは戦闘シーンが少々見づらかったという点、そしてヴェノムになってからの最強さが伝わってくる反面ハラハラ感があまり無かったです。
 全体的に作品がサーっと進んでいくような感覚があり、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」のような物語の中にあるストーリーを楽しむような感覚は個人的に少なく感じました。

 しかしヒーローなのかヴィランなのか…全てを破壊していくヴェノムに対して、その面での疑問は後半まで常に持ち合わせながら映画を楽しんでいくことが出来ると思います。


個人的ストーリー解釈・感想

(ネタバレ注意)


 映画開始直後に エディ・ブロック が有名なジャーナリストである事や彼女がいることなどの情報を一気の観客に伝えた上で作品は進んでいきます。
 言葉を使いストレートに情報を伝えるのではなくエディが出演している報道番組の映像を幾つも流し、その上で編集長らしき人物から「君の記事は面白いが今度はトラブルは起こすな」と言われていることからエディは報道の世界において人気な人物ではあり才能もあるが自分のコントロールがあまり上手くない人物であることが伺えます。

 冒頭シーンで恋人である アン・ウェイング はエディと婚約を交わしていましたがアンが弁護を担当しているライフ財団に関してのメールを勝手に読むというエディの身勝手な行動により所属している弁護士事務所から左遷されてしまっていました。
 結果的にエディはそのメールの情報を元手にライフ財団のCEOである カールトン・ドレイク をインタビューの際に問いつめ、彼自身も所属している報道関係の会社から左遷されてしまいます。
 
 この自分勝手な行動が決定打となってエディとアンは婚約を解消し、破局してしまいました。

 この後は数ヶ月時が進んだような構成になっており、エディが一人で悲しみに打ちひしがれながらバーで酒を呑んでいるシーンから始まります。
 長らく仕事をしていないことやバーにいる客から「エディ・ブロックか?」と声をかけられていることから皮肉にも職を失った今も知名度は一定数ある現状を理解することができます。
 序盤ではホームレスに縋られても無視し見捨てていくような人間性の持ち主であったエディでしたが、ホームレスを見捨てずに騒音を起こす隣人に対してストレスを感じて苛立ち出すなど心の中に何らかの変化や闇を抱えて言っているように私には思えました。

 時はまた少し進みライフ財団の研究者である ドーラ・スカース から一通の連絡がありエディはドーラと話します。
 その内容はエディが左遷される原因となったインタビューでの話は全て事実であり、今現在謎の生命体と融合することの出来る人間を探すために非人道的手段をドレイクが取り続けているということでした。
 しかしこの時何事にもやる気が起きずに人生のどん底にいるエディはドーラの真実を明らかにして欲しいという願いを無視します。
 その後、人の弱さや打ち勝つことの出来ない闇などを見ていく中でエディは再び報道の熱を取り戻していきます。
 私はここでエディは根っからの報道マンであり真実を追い求めることに関して右に出るものはいない程熱い男なのだなと映画をいている中で再認識しました。

 どのような過程でエディに謎の生命体 シンビオート の一種である ヴェノム が寄生したのかは映画を見て頂くとして、ここからは寄生した後の話をしていきたいと思います。

 本作ではあまり描かれていませんがシンビオートは人間のアドレナリンを食していくため、寄生された人間は常に空腹に苛まれることになります。
 この設定に限らず本作は少々設定が曖昧な箇所がいくつか見られます。
 気に入ったからという理由で地球を守るヴェノムに対し無邪気さや可愛らしさを感じる人も多いですが、いまいち理由が曖昧で乱雑であるなと私は思いました。
 やはり原作でのスパイダーマンというエディとヴェノム共通の敵がいてこその悪であり、そのスパイダーマンがいない時に垣間見えるヴェノムの善という二面性がスパイダーマンの不在により描かれていないのはヴェノムの魅力半減であるなと思いました。
 制作会社の関係でMCUと関連づけることができないので仕方ないといえば仕方ないですが、ヴェノムを主人公に置いてなおヴェノムの魅力が光りストーリーもしっかりとしているという印象は受けませんでした。

 しかし描かれていないとはいえシンビオートに規制された人物は空腹に襲われるという設定は健在であり、本作でもシンビオートに寄生された直後エディはゴミ箱を漁って捨てられていたものを食べた上にお菓子を物凄い勢いで食べていきます。

 彼のいくつもの奇行からドレイクがエディの元にシンビオートがあると気づくと彼は彼の手下をエディの元に送ります。
 ここからのアクションは非常に素晴らしかったです。
 寄生された直後でヴェノムの存在を認識していないエディは自分自身の体に何が起こっているのか理解していない上に、自分の家に訪れたドレイクの手下を自意識とは反して自らの手で次々になぎ倒していきます。
 バイクに乗りながら両側を走行する車を転倒させるなどヴェノムという能力があるからこそ出来る特殊なアクションシーンを10分間程楽しむことが出来ました。
 アベンジャーズなどとは少し異なり、おどろおどろしくもどこか可愛らしく強いヴェノムとエディの掛け合いの中で進んでいく激しいアクションシーンは必見です。

 様々な家庭を経てエディはアンが現在交際していて医師である ダン・ルイス の手助けを受けて、自らの体に何らかの寄生生物が寄生していることやその生物がある周波と熱に弱いことを知ります。
 エディは医療用機器の力を使って自らのからだからシンビオートを抜き取りますが、シンビオートは排気口から別室に移動し、犬に寄生した後アンに寄生します。

 その頃力を失ったエディはライフ財団に捕まり、ドレイクがヴェノムとは異なるシンビオート ライオット を体の中に取り込んでいることを知ります。
 その後アンと再会を果たしてアンに寄生していたヴェノムはエディの元に戻ります。
 それまで最強の生命体として描かれていたヴェノムがシンビオートの中でも格別の力を持つライオットに対して少々怖気づいているシーンのヴェノムが可愛らしくて私は好きでした。

 映画も終盤に入り、エディとドレイクの戦いが始まります。
 このあとのストーリーは是非劇場に行って頂くか、DVDが発売されるのを待って見るまでのお楽しみとしていただきたいと思います。



 コメント


ぼくら日本人にとってヒーローというと戦隊ヒーローや仮面ライダーなどの特撮ヒーローやジャンプコミックスなどのキャラクターたちがメインだと思う。
 彼らの中に変わらずある信念は正義感であると大半の場合が言える。
 しかし今作「ヴェノム」では悪の中にある無邪気さや正義、人を守るという善の心を感じることが出来る。
 人間誰しも少なからず嫌なところや嫌なものがあり、常に嫉妬や嫌悪感とともに生きなければならない。
 どれだけ正義を求めてもその奥には悪も混在している僕らにとってヴェノムは遠くもどこか近く感じる存在なのかもしれない。

 ヴェノムは次回作の制作がおそらく確定しているのでアメコミ好きの僕としては非常に期待している。


2018/11/19
TeRU

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